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■いわゆる「ダウンロード違法化」は罰則無しが前提だったのにいつの間にか忘れ去られてるぞ

 現在国会にて違法にアップロードされたファイルを違法なファイルだと知ってダウンロードした者に罰則を科す「私的違法ダウンロード刑罰化」を盛り込んだ著作権法改正案が審議されている。この法案についてはさまざまな議論があるところだが、「そもそも違法にアップロードされたファイルをダウンロードするのは違法なのだから罰則を科しても問題なかろう」といった意見が時折見られる。しかし、違法ファイルをダウンロードすることを違法とすることを答申した文化審議会は罰則を科さないことを条件として違法とせよと答申したのだ。2009年1月に取りまとめれた文化審議会著作権分科会報告は「違法録音録画物、違法配信からの私的録音録画については、その実態から通常の流通を妨げているものと考えられ、ベルヌ条約等のスリーステップテストの趣旨、先進諸国の法改正や判例の動向等を勘案すれば、中間整理で示された条件を前提として、第30条の適用を除外する方向で対応することが必要であるとの意見が大勢であった。」としている。そして「中間整理」は次のように述べている。

 第30条の適用範囲から除外する場合の条件
 違法サイトであることを知らないで利用した者についてまで権利侵害にするのは行き過ぎではないか、あるいは権利侵害といっても個々の利用行為ごとに見れば権利者に与えている被害は軽微なものではないかなどの指摘があり、利用者保護の観点から、次の点について法律上の手当が必要であるとされた。
ア 第30条から除外する行為について、例えば、違法サイトと承知の上で(「情を知って」)録音録画する場合や、明らかな違法録音録画物からの録音録画に限定するなど、適用除外する範囲について一定の条件を課すこと
 なお、この点に関しては、利用者への趣旨の周知に努めるとともに、利用者が明確に違法サイトと適法サイトを識別できるよう、適法サイトに関する情報の提供方法について運用上の工夫が必要と考えられること
イ 第30条から除外する行為は、「複製」一般ではなく、権利者の不利益が顕在化している「録音録画」に限定すること
ウ 第30条の適用がない私的目的の複製については、犯罪としては軽微なものとして従来から罰則の適用を除外しているので(第119条第1項)、本件についても同様とすること
(強調は引用者)

 このように、罰則を科さないことを前提として違法にアップロードされたファイルをダウンロードする行為を違法としたのであるから「ダウンロードは違法、違法行為に罰則を科してもいいだろう」というのは本末転倒である。

なお、この法案について私見を。
 ダウンロードが権利者の利益を妨げている、経済的利益を守るためにも犯罪化をとの権利者の主張はわからなくもないものの、それにしたってなお「アップローダーから金を取りに言ったらいいんじゃないの?」という気持ちが率直なところだ。youtubeやニコニコ動画はJASRACと正式に契約して音楽の著作権に関しては処理を済ませたことを見るにつけ思うのだ(ただし、原盤権-著作隣接権の一-については許諾契約を結んでいないので市販の音源をアップロードすることはなお違法である)。著作隣接権についても契約を結び、しかるべき利用料を徴収して共存共栄を図るという落としどころが考えられてもいいはずなのだが権利者はとにかく禁止一辺倒なのだ。音楽を蔵の中に押し込めておくことが本意ではないだろうから利用はしてもらっていいけれどお金はもらうよという立場もあるはずなのだ。
 この点、ネット上では叩かれがちなJASRACの姿勢は参考に値する。twitter上で誰かがつぶやいていたことなのだが、JASRACの最大の功績は音楽限定で著作権を対価請求権に変えてしまったことなのだ。お金さえ払えばどんな利用形態でも著作者人格権を害さない限り利用できる。だから例えばこのブログだってJASRACにお金を払いさえすれば自由に歌詞などを掲載できたりする。これは携帯電話向け音楽配信がレコード会社の許諾を得られないという事情で事実上「レコチョク」一社の独占状態にあったことからすれば大きなことだ(もっとも、「レコチョク」一社にしか許諾しないことについては独占禁止法違反という判決が最高裁で確定している‐公正取引委員会サイト参照)。これと同様の仕組みを原盤権にも導入できないものか。JASRACに集中管理させるものとし、契約はすべてJASRACと行う。JASRACは強力な調査機構を持っているので違法アップロードの発見・是正にも強力に力を発揮できるはずだ。もちろん包括契約等も導入し、例えばニコニコ動画等とこのような契約を締結し、ユーザーは自由に楽曲を使用できるようにする。結構いい落としどころだと思うのだがどうだろうか。このように取締りよりもまずは契約締結交渉を始めてみるのが先決ではなかろうか。現在のところエイベックスがニコニコ動画と契約を結んだのみで他のレコード会社は追随していない。お金をいただこうと交渉もせずにいきなり犯罪化というのは順序が違う気がする。
 著作権法は決して権利者の利益のみを追求した法律ではなく「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」なのだから。
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テーマ:著作権法改正 - ジャンル:政治・経済

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ブログ名変えた(2011.4.24)。落ち着かないなあ。

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