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■都道府県ごとの携帯フィルタリング使用率と非行率との相関を計算してみた

 警察庁が去る8月26日に児童が使用する携帯電話に係る利用環境実態調査結果についてという資料を公表した。この調査は保護者にこどもが使う携帯電話にフィルタリングをかけているかなどといったことをアンケートしたものである。で、この資料には都道府県ごとのフィルタリング利用率が掲載されている。とくれば都道府県ごとのフィルタリング使用率と刑法犯検挙人員率(非行率)との相関係数を計算したくなるというもの。早速計算してみた。なお、そもそも携帯を使用していない者の割合も考慮に入れるために携帯不使用者数(こどもが携帯を使用していないと答えた回答者数。実際には携帯を使用していると答えた者の数を調査対象者総数から除した)とフィルタリング利用者数(先に示した資料にあるフィルタリング使用率と携帯使用者数から算出した)を合わせた数が回答者総数に占める割合を「フィルタリング率」とした。算出に用いた数値は以下の表に示した。
都道府県別フィルタリング使用率と非行率
都道府県中学生高校生
回答総数携帯所持者所持者中フィルタリング率フィルタリング率非行率回答総数携帯所持者所持者中フィルタリング率フィルタリング率非行率
北海道37219866.282.015.518718234.636.357.4
青森58213167.992.771334833161.363.198.1
岩手356876992.423.816116054.454.684.8
秋田66722574.291.37.964763264.265.038.2
山形15112976693.323.696794459.760.668.9
福島65727063.384.929.436035960.260.3111.2
東京24117777.483.47.2777356.258.4810.8
茨城40619160.781.517.219919740.140.710.2
栃木118049273.488.918.11122109259.360.399.3
群馬29412266.486.0614.821321141.742.2512.6
埼玉1431047481.0910.2626137.738.712.8
千葉73849967.978.312.228828440.541.3310.2
神奈川35120576.686.3311.422721871.172.2512.2
新潟3266755.290.798.218317737.339.368.6
山梨24714669.982.2112.91089544.250.926.8
長野43010669.892.56813813658.859.47.2
静岡36619065.381.99626926238.940.498.5
富山2307365.889.158.11561546161.56.8
石川3659176.994.248.335734776.477.0614.1
福井64219565.689.557.126825562.464.227
岐阜120742862.486.677.741139455.657.447
愛知85537366.585.3911.527226147.149.248.7
三重95864377.384.767.632932540.341.038.8
滋賀42817160.884.3411.721321160.761.079.5
京都161588172.885.1618.948547045.346.9912
大阪58040860.372.0716.425725735.435.49.2
兵庫1356668.284.4516.621020655.856.6413.1
奈良66342963.976.6411.818318034.435.488.7
和歌山73540665.881.1111.736936230.932.2110.7
鳥取83220261.990.756.668066142.243.828
島根49716256.885.924.638237561.962.67
岡山57122963.385.2815.62962894647.2810.2
広島83431467.287.6520.51531485051.6311.3
山口96440265.785.713.191587645.948.2110.6
徳島52130267.581.169.827026536.637.7710.9
香川115446462.384.8420.94774665354.089
愛媛110338763.387.1212.596592947.849.756.4
高知61030064.782.6420.849145951.955.0317.8
福岡34017170.885.3117.418015551.658.3215
佐賀61516164.690.731039337154.456.9512.1
長崎29210164.487.696.418518265.465.967.5
熊本40211377.993.7910.62462365354.9111
大分6981836590.827.869661360.465.126.8
宮崎38511769.290.648.83643504244.238.3
鹿児島1524870.890.785.718718262.163.116.2
沖縄2189772.287.6316.816114156.762.085.6
凡例
 回答総数、携帯所持者、所持者中フィルタリング率については警察庁「児童が使用する携帯電話に係る利用環境実態調査結果について」、非行率については警察庁「平成22年中における少年補導及び保護の概要」表43によった。

 で、計算結果は中学生については相関係数-0.34(マイナスとはこの場合フィルタリング利用率が上がるほど非行率が下がったことを示す)と弱い相関が見られた。また無相関検定の結果は危険率5%で有意であった(危険率0.0198)。この計算結果のRコンソールを以下に示す。
> b

Pearson's product-moment correlation

data: a[, 5] and a[, 6]
t = -2.4183, df = 44, p-value = 0.0198
alternative hypothesis: true correlation is not equal to 0
95 percent confidence interval:
-0.5755874 -0.0579902
sample estimates:
cor
-0.3425221
 中学生については一応相関が見られたもののいまいち強い相関とはいえないようだ。次に高校生であるが、高校生については相関係数が-0.04とほとんどゼロに近い数値、無相関検定の結果は危険率が0.767となり有意な相関ではないという結果となった。こちらもRコンソールを示しておく。
> c

Pearson's product-moment correlation

data: a[, 10] and a[, 11]
t = -0.2982, df = 44, p-value = 0.767
alternative hypothesis: true correlation is not equal to 0
95 percent confidence interval:
-0.3308884 0.2486355
sample estimates:
cor
-0.04490358
 なお、念のために警察庁資料にある携帯使用者中のフィルタリング使用率と非行率との相関も計算した。結果中学生は相関係数-0.01以下、危険率は99%を超えていた。高校生は相関係数が-0.05、危険率が0.74であった。それぞれのRコンソールを示しておく。
中学生
> cor.test(a[,4],a[,6])

Pearson's product-moment correlation

data: a[, 4] and a[, 6]
t = -0.0034, df = 44, p-value = 0.9973
alternative hypothesis: true correlation is not equal to 0
95 percent confidence interval:
-0.2907706 0.2898253
sample estimates:
cor
-0.0005161676

高校生
> cor.test(a[,9],a[,11])

Pearson's product-moment correlation

data: a[, 9] and a[, 11]
t = -0.3339, df = 44, p-value = 0.74
alternative hypothesis: true correlation is not equal to 0
95 percent confidence interval:
-0.3356775 0.2435743
sample estimates:
cor
-0.05027894

 ものの見事にフィルタリング使用率と非行率とに相関関係は見られないという結果になった。さらに念には念を入れて福祉犯被害率との相関も調べた。ただし福祉犯被害率は学職別の統計がなかったので総計の数値を使用した。中学生のフィルタリング使用率と福祉犯被害率の相関係数は0.24…ということはフィルタリング使用率が高いほど福祉犯罪の被害に遭う可能性が高いという結果になってしまった。もっとも危険率は10%を超えているので有意な数値とはいえないのだが。Rコンソールは以下のとおり。
> cor.test(a[,4],a[,12])

Pearson's product-moment correlation

data: a[, 4] and a[, 12]
t = 1.6518, df = 44, p-value = 0.1057
alternative hypothesis: true correlation is not equal to 0
95 percent confidence interval:
-0.05233472 0.49706530
sample estimates:
cor
0.2416344

 さらに高校生のフィルタリング使用率との相関係数も計算すると0.01以下、ほとんど相関など見られないという結果になる。こちらの危険率は0.9797とこれまた有意な結果とは言えないという結果である。Rコンソールを以下に示す。
> cor.test(a[,10],a[,12])

Pearson's product-moment correlation

data: a[, 10] and a[, 12]
t = 0.0257, df = 44, p-value = 0.9797
alternative hypothesis: true correlation is not equal to 0
95 percent confidence interval:
-0.2867529 0.2938353
sample estimates:
cor
0.00386707

 と、警察統計上の非行率や福祉犯被害率とフィルタリング利用率とは数学的には相関関係は見られないという結果になった。といってももしかしたら他の要因が関係していてその要因を取り除けばフィルタリングと非行率などに相関が見られる可能性はあるのだが。警察の取り締まり方針やらその他の要因やらが関与している可能性もあったりするからフィルタリングを利用すれば警察のお世話になる確率が減るというような単純なことは言えないというのが結論である。他の調査がフィルタリングの使用を推奨する可能性はあるにせよ警察統計はフィルタリングを推奨する材料には使えないという考えてみれば当然の結果に落ち着いた。
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テーマ:少年犯罪 - ジャンル:政治・経済

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