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■千葉県議会と埼玉県議会の出す「意見書」・「決議」がネトウヨ好みのものになりつつある

 各自治体の議会は「意見書」というものを出すことができる。これは地方自治法第99条に基づくもので、国会又は関係行政庁に提出することができる。議会として国に要望するときに使われるものだ。また「決議」というのもあってこれは議会としての意思を表明するものだ。基本的にはその自治体の事務に関して意思表明をするときに使われる。追悼などに使われることもある。決議のほうは特に法的根拠はない。また意見書・決議のどちらも法的拘束力はない。たいていの方は意見書や決議などほとんどご存じないであろうがどこの地方議会もこういうものを出している。で、その意見書や決議なのだが、埼玉県議会と千葉県議会が最近議決したものの中にネトウヨが好みそうなものが結構出てきている。詳しく見てみよう。

1.埼玉県議会
 埼玉県議会の決議・意見書を過去5年分(2006年から)見てみた。2006年6月定例会では北朝鮮がミサイルを発射した事件に対して「北朝鮮に対し、国際社会と連携した断固たる措置を求める意見書」「北朝鮮によるミサイル発射に抗議する決議」というものを出している。また9月定例会でも「北朝鮮に対しあらゆる制裁措置を講じ、毅然とした外交の展開を求める意見書」「北朝鮮による核実験実施に抗議し、すべての核兵器及び核計画の放棄を求める決議」を出しているがこれらの決議をウヨ的とするのはこれらをネトウヨ的とみなすのはやや無理がある。したがってネトウヨ的決議とはみなさない。その他の意見書・決議は警察官の増員を求める決議など特にネトウヨばかりが好みそうなものとはいえない(ちなみに埼玉県議会は繰り返し警察官の増員を求める意見書を提出している)。2006年度中の意見書・決議の総数は23件であった。うち北朝鮮関係の意見書等は4件である。2007年度はは12月定例会で「米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除に反対する意見書」を議決しているがこれもネトウヨ的とばかりは言えないだろう。同年度の意見書等の総数は23件である。2008年度は6月定例会で「米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除並びに経済制裁の一部解除に反対する意見書」を議決、2月定例会で「北朝鮮による日本人拉致問題の解決のため経済制裁の延長などを求める意見書」を議決している。これらも必ずしもネトウヨ的とは言い切れない。そのほかのものは「不動産登記法第14条第1項に基づく登記所備付地図の早期作成を求める意見書」(12月定例会)などという専門的な事項に踏み込んだ決議など県民生活にかかわるものが主で特にネトウヨ的な決議は見られない。同年の意見書・決議の総数は17件であった。
 2009年度に入るとボチボチネトウヨ的な意見書等が見え始める。12月定例会で「選択的夫婦別姓法案提出について慎重な対応を求める意見書」「永住外国人への地方参政権付与の法制化に慎重な対応を求める意見書」「改正国籍法に基づく国籍取得の厳格な審査を求める意見書」の3件を議決している。特に最後のものは「国籍の取得を目的とする偽装の認知が行われるおそれがあり、また、未婚の場合でも簡単に国籍を取得できることから、我が国の家族形態を崩壊させることにもつながりかねないものである」などと述べておりかなりネトウヨの主張に沿っている。翌2月定例会でも「人権救済(擁護)法案に反対し完全撤回を求める意見書」「国立戦没者追悼施設の設置に慎重な対応を求める意見書」「教育の政治的中立の確保を求める意見書」と3件を議決している。「教育の政治的中立の確保を求める意見書」では「日本教職員組合と、政府・与党との異常ともいえる密接な関係は、多くの国民が大変危惧しているところである」などと述べ、これまたネトウヨどもの主張にかなり近いものとなっている。同年の意見書等の総数は32件であった。2010年度は6月定例会で「子ども手当を見直し、保育所の整備・拡充や幼児教育無償化等、子育て家庭が真に必要とするサービスを実施すること」などと述べた「財政の健全化を求める意見書」を議決。翌9月定例会でも「米価下落の原因は、米価下落と財政支出拡大の持続的連鎖が生じる不適切な米戸別所得補償モデル事業にある」などと個別所得補償制度を批判した「米価下落への緊急対策を求める意見書」を議決している。また「尖閣諸島海域での中国漁船衝突事件における日本政府の対応に関する意見書」も同定例会で議決されている。12月定例会では幼保一元化に反対する「理念なき幼保一体化に関する意見書」を議決した。2月定例会になるとさらにエスカレートして「外国資本による土地売買等に関する法整備を求める意見書」「高校授業料の実質無償化の見直しを求める意見書」「教育基本法・学習指導要領の目標を達成するため、最も適した教科書の採択を求める決議」「教師を信頼し、教師はそれに応える、あたたかな教育環境を回復するための施策を求める決議」と4件も議決している。「高校授業料の実質無償化の見直しを求める意見書」は「「社会全体で子どもを育てる」という理念は、理念としては素晴らしいものであるが、現金給付をすることがすなわち「社会全体で子どもを育てる」ことになるわけではない。そもそも、高等学校教育とは義務ではなく、自らの意志で学びたい者が参加する自己決定の場である。憲法で定められているとおり、無償化されるのは義務教育だけである。高等学校教育まですべて租税で負担する必要はなく、高校授業料の実質無償化は高等学校教育の本来のあるべき姿ではない」などと2ちゃんねる「ニュース速報+」掲示板あたりで見られる意見を上品な表現に直しただけの決議となっている。さらにその前の9月定例会で幼児教育の無償化を要求する意見書を提出していることも注目に値する。これまた2ちゃんねるニュース速報+板あたりで幼稚園無償化は貴重な子育て支援、高校無償化はゆとり脳に無駄金使うだけなどという意見を目にしている私からすれば埼玉県議会のこの姿勢は完全に2ちゃんねるレベルといって差し支えないだろう。「教師を信頼し、教師はそれに応える、あたたかな教育環境を回復するための施策を求める決議」では「教育とは、人と人との営みである。思いをぶつけ、情熱を注ぐ営みである。ときに、「行きすぎ」もあるのかもしれない。が、機械的にそれを処分すればよい、というものでもない」などと述べ暗に体罰を容認するかのような決議となっている。2010年度中の意見書等の総数は39件であった。2009年頃から意見書等のネトウヨ度が上がっていることがわかる。2006年から2010年までの意見書等総数、そのうちのネトウヨ的意見書数をフィッシャーの正確確率検定で検定したところ2006年から2010年までで有意差が見られる(危険水準危険率1%以下)。

2.千葉県議会
 こちらも千葉県議会「会議の概要」からたどり各年の意見書等を見てみた。全般的に千葉県は埼玉ほどネトウヨ度は低いという印象である。
 2006年度は6月定例会で「北朝鮮のミサイル発射に抗議する決議」、9月定例会で「北朝鮮の核実験実施発表に抗議する決議」を出しているのみだ。埼玉県議会の項で述べたがこれらをネトウヨ的とみなすのは無理があるだろう。むしろリベラル的な決議とも解釈できる。核実験反対、核廃絶はリベラル派の主張でもあるからだ。同年度の意見書等の総数は28件、北朝鮮関係は2件であった。2007年度は12月定例会で「米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」に反対する意見書」を議決しているが特にネトウヨ的とみなせるものではない。同年中の意見書等総数は37件であった。2008年度は6月定例会で「拉致問題の早期解決のため、北朝鮮に対する経済制裁の継続を求め、また、「核計画申告」の検証結果によってはテロ支援国家の指定解除の撤回を求める意見書」を議決しているが特にネトウヨ的といえるものでもないだろう。同年度の意見書等の総数は28件である。2009年度は5月臨時会で「北朝鮮の地下核実験及び弾道ミサイル発射を糾弾する意見書」を議決しているがこれは特にネトウヨ的とは言えない。次ぐ6月定例会で「日本放送協会(NHK)の偏向報道に関する調査と行政指導を求める意見書」というのを議決していて、こちらはネトウヨ的と言えるものである。9月定例会では「安心して教育が受けられる社会の実現を求める意見書」で「OECD諸国並みの公財政教育支出を確保すること」まで要望していたりする。もっとも幼児教育の無償化を要求する一方高校大学については低所得者向けの無償化を要望するにとどまっているからネトウヨ的といえなくもないがここではネトウヨ的とはみなさない。12月定例会では「非核三原則の法制化を求める意見書」を議決する一方で「定住外国人への地方参政権付与に反対する意見書」「高速道路原則無料化の撤回を求める意見書」「選択的夫婦別姓のための民法改正に反対する意見書」を議決している。千葉県議会のネトウヨ化もいよいよ始まったようである。もっともその後の2月定例会ではネトウヨ的と言えるほどの決議は見られない。同年中の意見書等の総数は60件、うちネトウヨ的決議は4件であった。2010年度は6月定例会で議決された「ばらまき政策を排し、財政の健全化を求める意見書」で子ども手当を非難している。9月定例会でも「地方財政に配慮した国の予算編成を求める意見書」で「子ども手当に代表されるばらまき政策をやめること」を要望している。12月定例会になると「仙谷由人官房長官の発言に抗議する決議」でいわゆる「暴力装置」発言にかみつき、そのほかにも「朝鮮高級学校を高校授業料無償化の対象とすることに反対する決議」「ロシア大統領の北方領土訪問に対し、毅然とした外交姿勢を求める意見書」「尖閣諸島沖における中国漁船衝突事件に関する意見書」を議決する一方で「私立学校の果たしている役割の重要性を踏まえ、就学支援金制度を拡充、改善するよう強く要望する」とした「就学支援金制度の改善を求める意見書」を議決している。翌2月定例会では「教育基本法・学習指導要領の目標を達成するため、最も適した教科書の採択を求める決議」「民主党衆議院選挙マニフェストの早期の撤回・見直しを求める意見書」「尖閣諸島領海侵犯事件の不起訴処分に抗議し、万全の領域警備を求める意見書」を議決している。このほかにも「コメの戸別所得補償制度の見直しを求める意見書」を議決しているが内容を見ると「大幅な価格下落時に支払われる変動部分を全国一律から、地域ごとの再生産価格を補償するなどの柔軟な制度に改めること」などと要望しており一概に否定しているものではないのでこちらはネトウヨ的決議とはいえないだろう。同年の意見書等総数は52件、うちネトウヨ的決議は9件であった。千葉県議会についてもやはりネトウヨ化が進行していると言えよう。フィッシャーの正確確率検定を行ったところこの5年間で有意に差があるとの結果が見られた(危険度危険率1%以下)。

 なお、埼玉県議会と千葉県議会のネトウヨ度比較もしておこう。埼玉県議会は2009年度・2010年度に計71件の意見書等を議決、そのうちネトウヨ的なものが14件である。千葉県議会が同時期に議決した意見書等の総数は112件、うちネトウヨ的なものは13件である。これをフィッシャーの正確確率検定を行ったがp値は0.1404となり千葉県議会と埼玉県議会のネトウヨ度については有意差は見られないという結論になった。
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テーマ:地方の議会 - ジャンル:政治・経済

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