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■被災者が生活保護を申請したからと言って批判するのは間違いだがさいたま市に負担させるのもおかしい

 今回の記事はいくつかの前提に立っている。その前提は次の通り。
・被災者だからって避難所生活で我慢しなければならないいわれはない。避難所から出たいと言っても「わがまま」ではない。
・想定ケース…いわき市で自営業をしていたが、今回の地震、それに伴なう津波から急ぎ着の身着のままで何も持たずに避難。その後さいたま市に避難してきた方

 いわき市からさいたま市に避難してきた被災者がさいたま市に生活保護の申請をしたところ、さいたま市から難色を示されたというニュースがあった。これに対し、被災者への批判の声も一部(某2ch)で出ている。しかし、そのような批判は無理筋と言うものだろう。以下、検討していく。

1.「避難所があるからいいではないか」
 まず見られたのは「避難所があるからそこで衣食住が満たせるだろ」という批判だ。しかし、被災者だからといってプライバシーのない避難所生活で我慢しなければならないいわれはない。確かに避難所はある。だからと言ってそれだけの救助で我慢しなければならない理由もない。厚生労働省は「災害救助法の運用に関する件」(昭和22年10月20日発社第135号各都道府県知事あて内閣官房長官・厚生次官連名通達)で次の通り示している。

 本法による救助は災害直後の混乱状態下における罹災者の保護と社会秩序の保全のための応急的救助であるから救助を受け得るのは経済上の生活困窮者であることを要件としないのであるが、他面その救助は混乱状態の平静化に伴ない短期間に終了すべき性質のものである。従つて災害によつて経済上の生活困窮者に陥り継続的に保護を要する者については必要に応じて生活保護法による保護等に転換すべきである。

 避難所はあくまでも応急措置。それもお金があっても衣食住が満たせないような状態の時に限った一時的な措置である。であるから生活保護と災害救助を選ぶという発想自体がそもそも誤りなのである。生活保護を選べるようになった時点で災害救助は打ち切り。生活保護に切り替えというのが正しい対応だ。
 よしんば救助があるからその分保護は不要だとしても、生活保護法は第8条第1項で次の通り定めていることに留意されたい。

 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

 要は救助と基準を比べて基準に満たなければ保護を行うということだ。災害救助法の規定によって支給される食事の単価は1日1010円(最高)。1日1010円として31日間で31,310円。保護の基準がこれ以上だったらなんかしらの保護を出すことになる。さいたま市の生活扶助基準は41歳単身で81610円。住宅費を考慮しないとしても救助だけでは保護の基準を満たさないのは明らかだ。要否判定は要となる。

2.預貯金は?
 預貯金だってあるではないかという声も聞こえてきそうだが、これも直ちに使うのは難しい場合もある。確かに各金融機関は非常取り扱いを実施しているが、これとても身分証明書を持っていた場合のみ、それも10万円までだ。身分証明を持ち出せなければ引き出しは不可能。身分証明を持ち出せたとしても引き出せる額は10万円までだ。まさか津波から避難しなければならないほどの非常時に通帳やキャッシュカードを持ち出すのは無理だろう。取引金融機関が地元の信用金庫だったりしたら致命的だ。預貯金の引き出しなどほとんど不可能である。手持ち金があるうちに取引金融機関に赴いて解約すればいいのだろうが、急迫したときにそのような行動をとらせるのは非現実的だ。キャッシュカードさえあれば確かに普通預金の引き出しはできるが、おろせるのは普通預金だけ。定期預金は取引金融機関へ行って解約するほかない。どの道そのような余裕はない。

3.仕事は?
 これも考えられなくもないが、住居が落ち着かなければ仕事も難しい。今後の落ち着き先によっては職場が遠方になって通勤が非現実的になることも考えられる。まずは住居を、そのために生活保護をという考えは極めて自然である。また、どんな職にも適性というのがあって、そう簡単に転職できるものでもない。これは割と自明なことだと思うのだが、なぜか無視される方が多い。

4.義援金は?
 義援金があれほど集まっているじゃないか、義援金はどこへ行ったんだよという声もあろう。しかし義援金は特に今回のように巨大な災害では配分に時間がかかる。義援金の配分は基本的に「割り算」。集まった義援金を被害の程度に応じて分ける。公平に配分するには義援金がいくら集まったかを確定させ、どの程度の被災者がどのくらいの数出たかも確定させないとならないのだ。そうでないと割り算の式すら立てられない。そしていまなお続々死者・行方不明者が出る現状だ。全半壊家屋にいたってはいまなお調査中のところが多い(消防庁発第93報)。このような状況では義援金配分は無理だ。

 以上に述べた点を検討すると、結局機動的に対応できるのは生活保護しかないのだ。といってもさいたま市に負担させるのもおかしい。生活保護費の一部を自治体に負担させるのは住民を保護することによって自治体にもメリットがあるから云々となんかの教科書にあった記憶がある。しかし今回の被災者はさいたま市の住民ではなかった。明らかに法の想定外の事態である。これを自治体に負担させるのはおかしい。国庫において負担すべきである。

〔2011.4.7追記〕
 この記事で想定した被災者像はまだしも恵まれていた方(稼働年齢層、いわき市在住など)であったがもっとシビアな状態の被災者もいるはずである。例えば陸前高田市在住だった年金生活者など。自治体の住民データ自体が失われ、身分証明書さえ流失していれば口座振込の年金を使うのは無理である。とすると当然生活保護の適用しかない。
 もう一つ。費用負担について。生活保護法は保護費の3/4を国庫負担、残りの1/4を保護を支給する自治体の負担と定めている。ただし、居住地が無いかあるいは居住地が明らかでない者については都道府県が負担するように定めている。この規定に落とし穴があった。まず一。居住地が無い者が都道府県境を越えて移動する事態には合っていない(保護費の自治体負担を要求する根拠は「住民への保護は自治体にもメリットが」というものであったことを思い出していただきたい)。その二。居住地が明らかであっても急迫した事態のために居住地以外で保護を支給されるときにはそもそもこの規定は適用されない。いずれにしても今回の災害のように都道府県境を越えて避難者が移動する事態を法は想定していなかった。なのに災害救助の次は生活保護で対応すべきとしていたのである。今回の災害にはまったく合っていない。災害救助の次の段階として生活保護とは異なった制度を設けるべきである。
 生活保護も災害時にはそれなりに使い勝手が悪い。急迫時に資力があるのに保護を受けた場合後で保護費を返還することになっている(生活保護法63条)。これは医療費も含まれる。そして生活保護を受け始めれば国民健康保険の資格を失い、医療費の全額を生活保護から支給されることになる。生活保護法63条によって返還が必要なのは当然医療費も含まれる。すなわち国民健康保険のままだったら負担する必要が無かった医療費の7割分も資力があるのに急迫したので保護を受ければ負担しなければならないことになるのだ。急迫した事情がある者ほど負担が重くなるのは明らかにおかしな規定だ。
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