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■子の入信について-その4

前回の記事に対してにっし~氏が反論(はてな版はこちら)している。そこで私も再反論を行う。

何人も信教の自由を有する。当然、子も有する。ただし、子の場合、判断能力が未熟であるために一定の保護―一面では制約―を受ける。
そして、この保護を実現するために設けられたのが親権である。
子の保護のために設けられている制度である。親の保護のためにあるわけではない。
そして、憲法上の自由を制約することになるのであるから、その制約は必要最低限でなければならないのは当然である。

にっし~氏の論の致命的な欠陥は、本来は子本人の利益を保護する事を目的とした制度を(実質的には)親の専横を容認するための制度にすり替えて論じていることである。
それが端的に現れているのは以下の文である。

原則的に、親の信教の自由に基づく行為に対しては、原則として他者が介入することは許されない。

しかし、その親権行使が濫用といえる例外的な場合については、子どもの信教の自由を優先させるべきだということになる。

確かに、親自身のみについてのことならば、当然親の意思に介入する事は許されない。しかし、子についての事柄に対してまで親の広範な信教の自由を認めるというのはもはや単なる親の専横の容認に過ぎないとのそしりは免れない。
よって、かかる見解は誤りと断じる。
一言でまとめれば、子の自由を制限できるのは子の保護の為であって、親の自由を確保する為ではない。

さて、前回の記事では条文の重箱の隅をつついて親が無断で子を宗教団体に入会させても無効と結論づけた。これに対しても「親の信教の自由を侵害する」という反論がなされているが、これもまた親権の趣旨をはき違えており、失当と言わねばならない。
さて、身上監護権を根拠に財産上の行為以外にも代理権が及ぶという見解には一応の説得力はある。
そこで、代理権が及ぶという前提に立ち検討する。
最高裁は、親の代理権について次のように判示している。

親権者が右権限〔引用者注:財産上の代理権のこと〕を濫用して法律行為をした場合において、その行為の相手方が右濫用の事実を知り又は知り得べかりしときは、民法九三条ただし書の規定を類推適用して、その行為の効果は子には及ばないと解するのが相当である

(平成4年12月10日判決)
なお、この判決の全文は裁判所のサイトにも載せられている。こちら

確かに、上に挙げた判決は代理権の濫用が成立すると言うためには厳しい要件を課してはいる。
しかし、宗教の選択には個人の尊厳も関わってくる。これをモノやサービスの取引と同一の基準で処理してしまうのは到底許されないと言わねばならない(民法第2条参照)。
医療行為については親権者の取り消し権は認められないという見解すらある。
さて、宗教の選択というのは本人の深い納得が必要である事は論を待たない。このような選択が法定代理になじむのかという問題がある。
親子といえども所詮別人格、親が納得しても子が納得しないのは当然想定できる。宗教の選択という場面においてこれを無視してしまっていいのかという事だ。
また、宗教の選択には先に挙げた危険を冒してまで本人の判断能力がつかないうちにしてしまわねばならないという必要性もない。
もちろん、子の権利の制約は例外であるべきだということにも留意せねばならない。

以上の事を勘案すれば、宗教の選択を親に委ねるということは法の趣旨に著しく反するのではないか。従って、無効であるという結論になる。

補論
各宗教団体にあっては、この線に沿った自主的な対応を望みたいところではあるが、そのような良識を求めても(特にカルト宗教と言われる連中には)無駄だというのは悲しいところである。

参考文献
日本弁護士連合会子の権利委員会編「子の虐待防止・法的実務マニュアル」明石書店
久貴忠彦・米倉明・水野紀子編「家族法判例百選[第六版]」有斐閣
森田明「未成年者保護法と現代社会―保護と自律のあいだ―」有斐閣
追記(2008/3/1)
確かに、未成年者の権利を主張することは親権者に対する国家介入に道を開くのはわかるのだ(森田、前掲書参照)。
ただ、やっぱり、宗教の選択は本人が行うのが原則で、第三者(含む親権者)の介入は例外的であるべきことを考えるとそうそう簡単に親に委ねるという態度をとるのは問題である。
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