■2017年08月
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■「キモくて金のないオッサン」と「日本型福祉社会」

【日本型福祉社会】
 かつて、自民党は「日本型福祉社会」なるものを提唱した。政府が福祉を提供するのではなく、家庭や企業が福祉を提供するわけである。それによって大多数の日本人はそれほど悪くない生活を送れるとし、高齢化に合わせて部分的に手直しをしていけばよいとした。
 今一つつかみづらいだろうから、「日本型福祉社会」の様相を、あるサラリーマンの現役世代に絞って説明してみる。
 サラリーマンA氏は、大学を卒業後、とある企業に入社する。入社した企業は、安定した生活を支えるだけの所得をA氏に保障する。また、給与の他に住宅手当などといった企業内福祉も提供していた。一方、女性は、家庭を支える役割を担い、企業に入社したとしても一定年齢で退職することが期待された。男性に安定した生活給を保障するために、女性の労働は「パート労働」としてとても低い賃金に抑えられてきた。それでも、女性はいずれかの段階で男性と結婚して、男性の生活給を支えに生活するものだからそれでよいとされたのである。労働組合でさえも、男性に生活給をと要求していたくらいである。
 さて、男性は男性であるというだけで生活給を保障され、一方女性はそのような企業福祉にもあずかれない。だからこそ、女性はいずれかの男性と結婚して、男性が保障されている企業福祉の恩恵に間接的にあずかることが合理的な生き方だったのである。これが、かつて(といってもバブルが崩壊する直前まで)の姿であった。
 
【日本型福祉社会からあぶれた「弱者男性」】
 しかし、経済社会の変化は、男性にのみ生活給を保障することを不可能とした。すでに女性労働者はパートとして低賃金で雇われていた。そこで、そのような低賃金労働者を増やそうと考えるのは企業の自然の理である。「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」と、ILOフィラデルフィア宣言が言っている通りである。パート労働者が低賃金で働いている中、なぜ男性労働者にだけ生活給を保障する必要があろうか。そこに経済的合理性はなくなったのである。かくして、生活給をもらえなくなった弱者男性が生まれることになる。同時期、男女雇用機会均等法が施行され、確かに高所得を得る女性は増えた。しかしながら、男性稼ぎ手モデルからの脱却はついにならず、生活給からあぶれた男性はいまだに結婚から排除されたわけである。この間、女性だって確かに一部の人間は高所得を得たわけだが、そのような女性にとって、日本型福祉社会における結婚のメリットなど存在しないも同様であった。日本型福祉社会では、男性が稼ぎ手となって女性が家庭内の仕事をこなす、そういうモデルがあった。ところが、女性高所得者にとっては、どうせ男性と結婚したところで家庭内の仕事はすべて任されるわけであるから、結婚するメリットなど何もないのである。かくして女性高所得者は独身生活の道を歩くことになる。
 日本型福祉社会的な男性稼ぎ手モデルは決してなくなったわけではなく、今も根強く残っている。舞田敏彦氏の示したデータによれば、既婚女性の所得は明らかに既婚男性よりも落ちる。である以上、稼ぎ手役割を男性に期待せざるを得ないのは当然のことなのである。
 そして、ここで出てくるのが「キモくて金のないオッサン」である。彼らは、かつての「日本型福祉社会」を所与の前提として育った。だから、「キモくても」稼ぎ手としての役割を果たしてさえいればセックスパートナーにして友人である妻は容易に手に入ると考えたはずである。ところが、生活給からも見放され、結果としてキモくて金のないオッサンとして一人孤独に生きることになってしまったのである。そして、日本型福祉社会のおこぼれにあずかりたく「強者女性は俺様と結婚しろ」と言い続けているわけである。そして、実はホームレス支援の現場でも関係する事象が報告されている。ホームレスになった男性は、かつては仕事で存分に能力を発揮してきた。仕事さえできれば、そして賃金さえもらえてれば、生活は回っていたのである。例えば洗濯ができなかろうと汚れた服は買いかえればいいし、料理ができなくてももらった給料で弁当を買ってくればよかったのである。ところが、仕事を失い、それまで金があることを前提に回っていた生活は一気に破綻する。そこからホームレス化する。そのようなことが報告されていた(「生活保護200万人時代の処方箋 : 埼玉県の挑戦」埼玉県アスポート編集委員会編、ぎょうせい)。一般に、男性は稼ぎ手としての役割さえ果たせればそれでよしとされてきたと言える。それは私自身のことを言ってみてもそうだ。ところが、稼ぎ手としての役割すらどうやら果たせなくなった中年男性があまりにも増えた。これが「キモくて金のないオッサン」の正体であろう。
 確かにこのようなオッサンたちを「ざまあみろ」と切って捨てるのは簡単なのであるが、このようなオッサンを必要として育ててきたのもまた「日本型福祉社会」なのである。日本型福祉社会はすでに誰の目にも破綻は明らかで、新しい社会の設計図を描かなければならないのだが、いまだに新しい社会の設計図は描けない。
 僭越ながら、「キモくて金のないオッサン」への施策を、断片的ながら提案しておこう。
 ・労働組合の加入・結成の奨励(孤独な男性労働者の仲間づくりの場となると同時に、労働条件引き上げの環境醸成になる)
 ・労働時間の大幅短縮(最低でも週40時間を絶対的な上限とする。そのことによって家事などの他事にかまう時間を増やす)
 ・低家賃住宅の大量供給(金のないオッサンでも独立の世帯を持てるような住宅を保障する)
 
 全般に、日本学術会議提言「若者支援政策の拡充に向けて」は、キモくて金のないオッサン救済に役立つ提言となっているように見える。
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■ん?女性は弱者男性と結婚したがらないと言うけど、夫だってそれなりに弱者女性と結婚したがらないよね

 厚生労働省の「第14回出生動向基本調査」のデータをあさっていた。婚姻直前の所得のデータがあればいいなと思いながら。そのものずばりのデータはなかったが、夫の学歴・妻の学歴のデータは存在した。それなりに代理変数として使えるのではないかとにらんで、ここに仮説を提示する。
 2005年以降に結婚した夫婦のうち、夫が大学・大学院卒である夫婦は551組。そのうち、妻が中学校卒業である夫婦は5組。2005年以降に結婚した夫婦全体のうち妻が中学校卒業であるものの割合は3.6%であったから、その平均よりは低いことになる。男性は弱者女性であろうとも結婚していると言うには、ずいぶんと弱いデータではないか。女性は弱者男性を選ばないと怨嗟の声を上げているが、何のことはない、男性だって弱者女性を選ばないのである。この事実と向きあったうえで、女性に怨嗟の声を上げる前にするべきことを考えるほうが先ではないか。

■30代男性の所得は減る、家賃は高騰する。これで結婚できない男性が増えるのも当然ですね

 昨日に引き続き、またもや政府統計をほじくり返していた。まずは次のグラフ。30代所得階級
 1992年に比べ、年収が低い30代男性が明らかに増えたのが見て取れるグラフである。続いて、下のグラフをご覧いただきたい。家賃間代階級別住宅数
 こちらは、低家賃住宅が相当の割合で減少したことがはっきりとわかる。所得は減ったのに対し、低家賃住宅もまた減った。これで、どうして30代男性は結婚できようか。結婚が減るのもむべなるかなである。

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ブログ名変えた(2011.4.24)。落ち着かないなあ。

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