■2016年04月
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■福島第一原発事故による放射能汚染に対する基本的な態度

 福島第一原発事故による放射能汚染について、私は基本的には次のように考えている。
1.20km圏内の避難は必要やむを得ないものであった。
 原子力規制委員会サイトにある東京電力株式会社福島第一原子力発電所の20km圏内の空間線量率の測定結果を参照すると、事故発生当時の線量は相当高かったことがわかる。これを一生懸命除染して線量を下げたのであるが。であるから、20km圏内の避難は必要やむを得ないものであった。
2.しかし、必要やむを得ない避難によって犠牲者が出たことは事実である。この教訓を生かし、犠牲者を出さないような避難の手法を準備することが望まれる
 しかし、必要やむを得ない避難ではあったが、その過程で多くの死者が出たのは残念な結果であった。病院なども避難を強いられたのであり、それもろくな準備もできなかったのであるから、死者が出るのは当然である。今後はこの教訓を生かし、死者の数を1人でも減らすような体制作りが望まれる。
3.現在流通している福島産の農産物は、安全である。
 現在流通しているものは、適切に検査されていると認識している。特に、米などは「検査するほうが得になる」システムが福島県によって構築されている。このおかげで前例のない全袋検査が行われている。このような努力によって、市場に出荷される福島産の農産物は、安全であると言える。

 以上3点の穏当な考えを、私は採用している。
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■「『福島産は毒だ』など反原発が流してるデマはヘイトスピーチ」と言ってる人は、人権擁護法案反対派と潰しあわないかな

 小倉秀夫弁護士「「福島産は毒だ」など反原発が流してるデマ」はヘイトスピーチの定義から外れます。」 - Togetterまとめにわらわらと「反原発の「福島産は毒だ」なんてデマはヘイトスピーチ」なんて言っている人が次から次へと出てきている。確かに、「福島の農家は毒を作るな」なんてのは風評被害で、「「福島県の農家(=属性)は毒を作ってる」という虚偽の事実によって、「毒を作るな」という属性を元にした差別的な罵倒表現ならヘイトスピーチになるんじゃないか。という話」という意見に対しては、ヘイトスピーチに該当しないにせよそのような差別的な罵倒表現も法規制の対象にすべきと考える。実際に法務省も同じようなことを考え、2002年の第154通常国会に「人権擁護法案」を提出した。そのときの法案の条文を一部引用する。

 (人権侵害等の禁止)
第三条 何人も、他人に対し、次に掲げる行為その他の人権侵害をしてはならない。
 一 次に掲げる不当な差別的取扱い
  イ 国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い
  ロ 業として対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い
  ハ 事業主としての立場において労働者の採用又は労働条件その他労働関係に関する事項について人種等を理由としてする不当な差別的取扱い(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第八条第二項に規定する定めに基づく不当な差別的取扱い及び同条第三項に規定する理由に基づく解雇を含む。)
 二 次に掲げる不当な差別的言動等
  イ 特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動
  ロ 特定の者に対し、職務上の地位を利用し、その者の意に反してする性的な言動
 三 特定の者に対して有する優越的な立場においてその者に対してする虐待
2 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
 一 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として前項第一号に規定する不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為
 二 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として前項第一号に規定する不当な差別的取扱いをする意思を広告、掲示その他これらに類する方法で公然と表示する行為

 この法案が通っていれば、福島県の農家に対するきわめて悪質な人権侵害も規制できたのであるが、残念なことに自民党から共産党までの幅広い政党の反対によって廃案になってしまった。その後あれこれのいきさつがあって、人種差別・民族差別に的を絞った理念法としてのヘイトスピーチに対処する法律案が上程されようとしているという流れだ。今ヘイトスピーチ規制法案を通そうと活動している人たちが民族差別に的を絞って活動しているのは、人権擁護法案の二の舞にしたくないからで、本当の敵は2002年人権擁護法案反対派である。ヘイトスピーチ規制賛成派を捕まえて「反原発のデマをどうして規制しようとしないんだ」などといわれても、そこまで規制の対象を広げようとしたら猛烈に世論の反発を受けるからとしか言いようがない。
 なので、「福島の農家に対するデマ・差別発言もヘイトスピーチだ」などという人は、とりあえずまさにそのようなデマを野放しにすべきといわんばかりの2002年人権擁護法案反対派と話をつけてくれないか、と思う。産経など相変わらず反対派の模様なので、産経新聞もつるし上げていただきたい。

■ヘイトスピーチ概念の個人的な整理【全面改稿済み】

【2016/4/13全面改稿】
 とりあえず、ヘイトスピーチ概念が人権侵害の中にどう位置づけられるか、下の図にして整理した。
ヘイトスピーチ概念模式図
 では、具体的なヘイトスピーチの定義はなんなのか。この点、Journalism(朝日新聞出版)2013年11月号に収録された小谷順子氏の論文「アメリカとカナダの違いに学ぶヘイトスピーチ規制の法律と判例」に引用されている「憎悪の特徴」が参考になる。カナダ人権法の下でヘイトスピーチと認定するのに使われてきた項目である。以下にそのまま引用する。

(a)ターゲット集団が社会の主要な組織を支配して他者の生存や安全等を奪う強力な敵として描かれている。
(b)信頼性の高そうな実話やニュース報道映像等を用いることでターゲット集団をネガティブに一般化している。
(c)ターゲット集団が子ども、年配者、又は弱者等につけこむものとして描かれている。
(d)ターゲット集団が今日の社会と世界の抱える問題の原因として描かれている。
(e)。
(f)ターゲット集団の構成員が無価値で生来的に邪悪であるとする思想を伝える表現である。
(g)ターゲット集団による害悪から他者を救うためには当該集団の追放、隔離、又は絶滅が唯一の方法であることを伝える表現である。
(h)ターゲット集団を動物、害虫、又は排泄物と比較することで非人闇化している。
(i)極端に強い憎悪と侮辱を生み出すために非常に煽動的で侮辱的な表現が用いられている。
(j)ターゲット集団の構成員が過去に経験した迫害や悲劇を過小化したり祝福したりする。
(k)ターゲット集団に対する暴力を唱道する。

 在特会のヘイトデモの風景とこの特徴を照らし合わせ、まさにこんなことをやっていたなどと思われた方も多いであろう。このような特徴がいくつか見られることがヘイトスピーチの認定のためには必要とされているとのことである。私も、この特徴は非常によくヘイトスピーチの特徴を表していると考える。これらの特徴は、特定の属性を対象にした単なる誹謗中傷という域を超え、ジェノサイドへのベクトルを持つ(ジェノサイドについては(注)を参照)ものである。だからこそ、単なる人権侵害一般に対する規制よりも手厚い規制が必要になるのだ。
 具体的な事例をひとつ。小倉秀夫弁護士「「福島産は毒だ」など反原発が流してるデマ」はヘイトスピーチの定義から外れます。」 - Togetterまとめのコメント欄では「「おまえら朝鮮人の作ったものは毒だ」とコリアンタウンで言う」のがヘイトスピーチかどうかと問題提起をされているが、この例だと、「ターゲット集団が本質的に危険又は暴力的な存在として描かれている」「ターゲット集団の構成員が無価値で生来的に邪悪であるとする思想を伝える表現」であるかが問題になる。なので、(まずやらないだろうが)とりわけ食品の安全に厳しい生活クラブ生協の人たちが「韓国産食品は危険だ」とコリアンタウンで訴えてもおそらくはヘイトスピーチにはならない。特段に厳しい生活クラブの食品安全基準を満たさないものはすべて危険だとする思想を伝えているだけであるから。逆に、在特会の人間が同じことを言ったら、おそらくヘイトスピーチになる。朝鮮民族の人々が本質的に危険で邪悪であることを伝える一つの材料として韓国産食品の安全性を訴えているからだ。同じ判断基準で、「福島産食品は毒だ」とする表現がヘイトスピーチに該当するかも判断できる。そのような表現が、福島県の農家が本質的に危険だとする表現かと言ったら当てはまらないのではないか。どの属性の集団にもある課題のひとつとしての表現である限り、ヘイトスピーチには該当しない。確かに福島産食品は毒だとする表現は由々しきデマではあるのだが。ジェノサイドにもつながりかねない特に悪質な憎悪の扇動をヘイトスピーチとする立場からは福島産食品を毒だとするデマはヘイトスピーチには該当しないことになる。

 そして、近代の歴史上ジェノサイドに至るほどの憎悪を持ちえたのは、今のところ人種・民族・宗教に基づく差別だけである。小規模なものはあったのかもしれないが。であるからこそ、国際人権基準(人種差別撤廃条約と自由権規約)が人種・民族・宗教に基づく憎悪の扇動に限って法律で禁止しろと要求しているのである。もちろんこれらの限定は歴史上の経験に基づくものに過ぎないから、他の属性に対する憎悪扇動がジェノサイドに結びつきかねないものにまで至っている(具体的には「憎悪の特徴」に該当するもの)というのなら、それらもヘイトスピーチとして規制することは当然であるが、そうでないのなら、2002年人権擁護法案が社会の多層の「言論の自由を害する」との反対によって成立しなかったことを考えると、規制の対象にすることはできないと言えよう。ryoFC氏はこんな因縁をつけているが 福島差別がジェノサイドに結びつくベクトルを持っている(具体的には憎悪の特徴に該当する)ことを示すのが第一ではないか。人権擁護法案のように幅広くマイノリティの人権を救済する法案は「表現の自由」から成立しないのはわかりきったことで、ジェノサイドに結びつく特段に悪質な憎悪扇動に限って何とか法案を通そうとしているのがヘイトスピーチ規制賛成派の実情だからだ。
 過去、私はヘイトスピーチ概念の定義についてこれに反する見解を示していたことがあったが、それらはすべて撤回し、この記事にまとめたようなものを私の見解とする。

(注)ジェノサイドの定義について
 日本も加入している国際刑事裁判所ローマ規程は、ジェノサイドを次のように定義している。「集団殺害犯罪」は、日本の外務省がジェノサイドの訳語として採用したものだ。

 この規程の適用上、「集団殺害犯罪」とは、国民的、民族的、人種的又は宗教的な集団の全部又は一部に対し、その集団自体を破壊する意図をもって行う次のいずれかの行為をいう。
 (a)当該集団の構成員を殺害すること。
 (b)当該集団の構成員の身体又は精神に重大な害を与えること。
 (c)当該集団の全部又は一部に対し、身体的破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すこと。
 (d)当該集団内部の出生を妨げることを意図する措置をとること。
 (e)当該集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。

 「国民的、民族的、人種的又は宗教的な集団」と限定がなされているが、これも、とりもなおさずそのような属性をもつ集団がジェノサイドの標的にされた歴史に基づくものである。もし今後これらの属性ではない属性を対象にジェノサイドがなされる兆候があれば、ジェノサイドの定義を拡充することはありうるだろう。
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テーマ:人権 - ジャンル:政治・経済

■ヘイトスピーチは単なる罵詈雑言・誹謗中傷の問題でも、単なる差別でもなく、ジェノサイドに向かう一過程である

 表題について、とりあえず図式化した。
ヘイトスピーチピラミッド
辺野古でヤンキーゴーホームと叫ぶと、ヘイトスピーチになるという珍説。 - Togetterまとめなどをみていると、ヘイトスピーチを罵詈雑言とか誹謗中傷と同じものと捉えている人が多いことが見受けられるが、本来のヘイトスピーチ概念はそんなものではない。前回の記事で紹介した、カナダ人権法の下でヘイトスピーチと認定するために用いられた「憎悪の特徴」を読んでいただければわかるように、終局的にはジェノサイドに結びつくような対立を煽るような表現なのであり、誹謗中傷よりもより深刻度が高いものである。このあたり、ヘイトスピーチ問題の論者の間でも混乱が見られるようで、その混乱がさらに規制に及び腰にさせる悪循環をもたらしているように見受けられる。ここで一度、ヘイトスピーチとはジェノサイドへのベクトルを持つものであることを再確認する必要があろう。

【2016.4.15追記】
 つまり、こういうことである。
具体例1
 ラジオが特定の民族へのヘイトスピーチを始終放送する→大統領が殺害→ラジオ、日ごろからヘイトスピーチの対称にしていた特定の民族を殺害するよう扇動する→80万人が殺害される
 (ルワンダ虐殺)

具体例2
 日常的にある民族に憎悪感情を持つものが多かった→大地震が発生→その民族が井戸に毒を入れているとどこからともなくデマが流れる。メディアもそのデマに乗る→特定の民族、虐殺される
 (1923年関東大震災)

 具体例2は、「デマが流れる」ところまでは今現在進行形で発生している。ここからエスカレートしないことを願う。そのためにもヘイトスピーチ規制が必要なのである。

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ブログ名変えた(2011.4.24)。落ち着かないなあ。

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