■2014年09月
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■「女性専用車両に反対する会」、つくばエクスプレスと警視庁相手に訴訟を起こして見事訴えを退けられた

 togetterで女性専用車の是非についてやりあった。そこで私はふと思った。女性専用車に関する裁判例はないかと。そこで図書館に出かけて判例データベースを検索してみたところ、ありましたよ。女性専用車に反対する会のメンバーが起こした訴訟の判決が。そこでこの判決を紹介する。

 まずはことのいきさつを判決文を基に述べる。女性専用車に反対する会のメンバーらは2008年6月27日、秋葉原駅を20時24分に発車したつくばエクスプレスの列車の女性専用車に総勢5人(すべて男性)で抗議目的で乗り込んだ。同会はこの抗議行動に先立ってこの日に秋葉原駅に集合などと書かれたパンフレットを配布していた。つくばエクスプレス側はこのパンフレットを見て事前に秋葉原駅で警備員による警戒を行うと共に警視庁鉄道警察隊に連絡をしていた。この連絡を受けた鉄道警察隊も警察官を秋葉原駅に派遣して警戒に当たっていた。このような中女性専用車に反対する会のメンバーらが乗車したのを受けて秋葉原駅の駅長と警備員2名がこの列車の女性専用車に乗り込み、同会メンバーらに説得を始めた。これに対しメンバーらは男性の乗車は禁止されていないなどと反論し、もちろん降車しなかった。これを見ていた女性2名が怖いので次の列車を利用すると言って降車した。警察官はこの様子をプラットホームから見ていた。
 そうこうするうちに列車は発車。発車する前に警察官は女性専用車の隣の車両に乗車し、女性専用車の様子を見ていたが、新御徒町駅への走行中に女性専用車に移り、同会メンバーへの説得を始めた。このとき警察官は駅長の要請があれば逮捕することや女性専用車は鉄道営業法に根拠があること、駅長がメンバーらを鉄道用地外に退去させる権限を有するなどと説明した。さらに「聞きわけのないことを言ってるからだよ馬鹿野郎。お前らここに入っちゃいけないんだよ」などとも述べたようである。同会メンバーは浅草駅で列車から降車、警察官らも降車した。その後も浅草駅ホームで警察官と同会メンバーらは言い争いをしていた。その様子を同会メンバーが撮影していたところ警察官が撮影を止めないと公務執行妨害で逮捕するとして撮影を止めるように求めた。このような言い争いがしばらく続いた後警察官らは同会メンバーを残して現場から立ち去った。
 というのがことのいきさつである。そしてこれは女性専用車に反対する会のサイトの記述ともほぼ一致する。

 ここで女性専用車に反対する会のメンバーはつくばエクスプレス側に対して女性専用車には男性も乗れることをちゃんと表示しろ、女性専用車から排除されたのだから賠償金を払えと訴えた。こちらが東京地方裁判所平成22年(ワ)41244号である。さらに警察官が女性専用車から無理やり排除したとして賠償金を請求したのが東京地方裁判所平成23年(ワ)33279号だ。いずれもウエストロージャパンという判例データベースに収録されている。これらの事件の判決で裁判所はどう判断したのか、順を追って説明していく。

1.現行の女性専用車の設定・表示は違法なものかどうか(東京地方裁判所平成22年(ワ)41244号事件)
 女性専用車両に反対する会のメンバーは現行の女性専用車両の表示のせいで男性が女性専用車両に乗車できない、これは法の下の平等に反する違法行為だ、男性の居住・移転の自由を侵害していると主張した。これに対して東京地方裁判所は次のように判断した。以下に長くなるが引用する。

 もとより、原告ら男性について、憲法上、上記各基本的人権が保障されることは当然としても、しかし、他方で、被告には、法人として、憲法上、営業の自由(22条1項)が保障されていることもまた否定できないものであるから、被告においても、事業の遂行ないし営業に関する自由な裁量権を有しているというべきである。
 そして、現在、被告を始めとする多くの鉄道運行事業者が実施している女性専用車両の設定(甲6の1、6の2、弁論の全趣旨)は、平日の通勤通学の時間帯に相当な混雑をする首都圏等大都市圏の通勤電車(公知の事実)において、痴漢犯罪の被害を受けるおそれのある女性の乗客に対し、少しでも安心、快適な通勤通学環境等を提供するために行われていると解せられ(甲6の1)、これは目的において正当というべきである。しかも、本件鉄道において、被告女性専用車両が設定されるのは、上記第2の2(2)に記載のとおり平日の通勤時間帯の一部電車、しかも、同車両が設定されるのは6両編成の車両のうちわずか1両のみに過ぎず、これは健常な成人男性の乗客をして他の車両を利用して目的地まで乗車することを困難なら占めるものではないから、健常な成人男性の乗客に対し格別の不利益を与えるものでもない。
 さらに、上記のような被告女性専用車両の設定目的に鑑みると、その実効性の確保は重要であり、これを男性も含む本件鉄道の利用客に周知させる必要があることは論を待たないというべきところ、本件鉄道の利用者は不特定多数に及ぶものであることからすれば、かかる不特定多数の利用者に対し、被告女性専用車両の存在を周知させるためには、その表示も相当程度簡明であることが必要であると考えられる。
 かかる状況に鑑みると、被告が被告女性専用車両について、健常な成人男性も乗車することができる旨をあえて掲示せず、これを「女性専用車」であり、女性及び小学生以下又は身体の不自由な人(その介助者も含む)が乗車するために専用車両であると掲示したことをもって、被告女性専用車両の表示に関する被告の裁量権を逸脱した違法なものと評価することは相当ではないし、これが社会的相当性を欠いた、男性の乗客に対する不法行為を構成するということもできない。

 女性専用車に反対する会の主張が見事に切り捨てられている。

2.かなり強い説得行為も正当(東京地方裁判所平成22年(ワ)41244号事件)
 しかしこれはあくまでも表示に関するもの。それでは説得についてはどう判断されているか。これもまた引用。

 原告ら等健常な成人男性が、しかも集団で同車両に乗車するとなれば、現に同車両に乗車する他の乗客に対し少なからぬ不安感を与えるであろうことは容易に想像ができる。そうすると、公共交通機関である本件鉄道を運行する会社であり、かつ自ら同車両を設定した被告には、現に同車両に乗車する乗客の不安感を払拭するため最大限の行為を行うことがむしろ期待されているというべきであって、そのためには原告らに対しある程度強い説得行為が行われたとしても、これをもって直ちに社会的相当性を逸脱した行為と断ずることはできない。

 こちらもまたバッサリである。ひとたび設定したのなら表示するだけではなく女性専用と信ずる他の乗客の不安感の払拭のために最大限行為をすることが期待されていてそのために強い説得も認められるとしている。ここまで外堀を埋めたところで警察官の行為についての判断に移る。

3.警察官が強い説得行為をすることも正当(東京地方裁判所平成23年(ワ)33279号)
 さて、警察官の行為である。東京地裁はこのような結果として女性専用車に反対する会のメンバーらの言動によって車内が騒然としていたと判断した。そのような状況下で将来生ずる恐れのある何らかのトラブルを未然に防止し、車内の秩序を保つために女性専用車に反対する会のメンバーらに移動ないし降車することを求めるのは必要かつ相当な措置であるとした。そのような求めを受けてもなおも降車ないし移動をしないで反論して口論を続け、女性専用車に乗車し続けたのであるからこのような事態が続けばつくばエクスプレスに対する業務妨害になり、さらに事と次第によっては公務執行妨害などの犯罪行為になる可能性すらあったと認定。そして、このような状況下で駅長からの要請があれば逮捕すると女性専用車に反対する会メンバーらに告げた行為は「格別不適切ではなく、警察官に委ねられた合理的な裁量を逸脱ないし濫用したものとはいえず、…違法行為に当たらない」とした。また、「聞き分けのないことを言ってるからだよ馬鹿野郎」「鉄道営業法で、男性が乗ったら駅長さんは止める権限があるの」などと述べた行為についても先に述べた状況の中で女性専用車に反対する会メンバーらが自己の主張をひたすら続ける中でされた発言であることを考慮すれば社会通念上の受忍限度を超えた行為ではないとしてこちらも違法行為に当たらないと判断した。
 まあ後は同じ理屈がただ続くだけなので以下略。

まとめ
 この事件では女性専用車が鉄道営業法に基づく強制力あるものではないという前提の下争われた。それでも女性専用と表示することも合法、そして一旦表示したからには男性が乗車して来たら他の乗客の不安感払拭のために最大限の行為を行うことが鉄道会社に期待されるとし、それに対して男性乗客が抵抗するようならば車内が騒然とした状況にあると認定して警察官が男性乗客に対してかなり不穏当な発言をして制止したり降車を求めても違法ではないとした。ものの見事なたらいまわし技である。半分感心しつつ半分呆れているが、何はともあれ女性専用車に反対する会のメンバーの主張は一顧だにされなかった。男女差別とも認定されなかったのである。

おまけ1
 ちなみに女性専用車に反対する会のサイトにはこの敗訴判決は一切触れられていない(と思うが見落としてたら指摘してください。本当にお願い!)。

おまけ2
 togetterで女性専用車に男性が乗車することを禁ずる法改正は男女差別になるので不可能と書いている当人が高校無償化の対象から朝鮮学校を排除するのは人権侵害ではないなどと主張しているのだから呆れるばかりである。どちらがより不利益が大きいか容易に分かるだろうに。こういう人たちにとっては人種差別と言ったら日本人差別、性差別といったら男性差別、痴漢問題といったら置換冤罪問題を持ち出してくるのだろうなと。

おまけ3
 判決文がネットにあっぷされてないよおーとか言い出す人間もどうせでてくるだろうから一言だけ。
リブレカス。
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■「国民が知らない反日の実態」の主張する「男性差別問題」とやらは「男性特権」を侵害するなという主張でしかない

 国民が知らない反日の実態というもうタイトルからしてネトウヨがやってるようなサイトがある。その中の一ページ、「男性差別問題の正体」がもう大笑いそのものの内容に仕上がっている。大笑いすれば済む程度ならまだいいのだが、ここの主張、どう考えても女性差別を助長しているようにしか見えんのだ。いちいち取り上げていくとキリがないのでとりあえずやりやすいネタだけを検証していくが、先んじて結論を言っておくとこのサイトが言ってる男性差別とやらは女性が男性並みの環境を教授できるようにする措置のことを男性差別と称しているに過ぎない。かいつまんでいえば女性が男性並みの環境を享受するのは許せない、常に男性の環境は優遇されるべきと主張しているだけだ。ただし一部にはもっともな主張もあるのは事実ではあるが。
 さて、個別の検証。

男女共同参画社会基本法は、元からあるべき男性への考慮がされておらず、女性中心の内容となっており、両性への考慮が欠けている。

 一体元からあるべき男性への考慮とはなんなんだろうか。男性を優遇しろということだろうか。よくわからない。もともと社会参加が立ち遅れていた女性の社会参加を推進していく施策を打ち出すのは当然の事で、これを男性差別といっているのだろうか。

男女雇用機会均等法では、以前まで女性差別のみを禁止する内容となっており、男性差別を問題としていなかった(ただし、2007年の法改正により、男性への差別も処罰の対象となった)。

 これも前記同様。もともと雇用の世界では男性がとても有利であったという立法事実があって女性の雇用環境の底上げをするという目的で立案されたものであるから女性差別をまず取り扱ったのはいわば当然である。

生活保護法によると、女性は55歳から生活保護を受けられるが、男性は65歳からしか受けられない。

 そんな条文はどこにもない。生活保護を受ける要件は自らが有するリソースを使ってもなお国が定めた最低生活費を得られないというものだけである。なお、平成23年被保護者全国一斉調査と総務省統計局の人口推計によれば2011年の人口当たり生活保護利用者は男性の方が若干多い。

・夫は遺族基礎年金ないし遺族共済年金の対象者に含まれない。
・労災遺族年金法によると、妻は年齢制限が無いのに対し、夫は55歳からでないと受給出来ない。夫が無収入であっても適応される。
・寡婦年金では妻のみ支給される。

 これは数少ないもっともな主張ではあるが、しかしこれももともとは男性よりも就労の機会が少ない女性への手当てという面があった。ただいまや古びた感もあるので実際に崩壊性がされてこれらの制度による遺族給付も男性を対象とするように改められた。

女性専用車両はあるのに男性専用車両はない

 痴漢に遭うのはほとんど女性。女性が男性と同じ程度には痴漢を心配せずに済むようにする措置が女性専用車両だ。それを差別だとか主張するってことは要するに女性は男性よりも環境が劣っていて当たり前と主張しているに過ぎない。

 もういい加減うんざりしてきたので止めておく。このようにことごとく女性の不利を少しでもカバーしようとする施策を男性差別と称していることがわかる。そしてこのような発想が出てくるのは女性の不利を改善するなどとんでもない、再分配などとんでもないという発想だ。

 お笑い種なことに「男女共同参画の正体」なるページもあって、このページでは「ジェンダーフリー」を舌鋒鋭く批判している。「【ジェンダーフリー※2】・【伝統文化の破壊】 」を問題視するくせに「一部の教育機関や企業等では男性のみファッションや染髪等を禁止する。それに対し女性は茶髪やネックレス、指輪等、ファッションの自由を認められているが、男性はファッションの許容度が低く制限される傾向がある。」ことを男性差別と称しているんだからもう何がなんだかさっぱりわかりませーん。
 最後。「女性の社会参加促進→職は無限ではない→【ニート問題】」と書いてあるがそもそも総務省統計局「就業構造基本調査」によれば20代後半の通学者を除く無業者の割合は1987年に比べて減少している。ただその内訳が違っているだけだ。確かに1987年は20代後半の通学者を除く無業者はその8割以上が配偶者ありの女性で、10%が配偶者無しの女性、10%が男性(配偶者の有無は問わない)であったのが2012年は20代後半の通学者を除く無業者総数に占める割合は配偶者ありの女性が42%に下がる一方配偶者無しの女性が29%に、男性(配偶者の有無は問わない)が28%(いずれも四捨五入、合計は合わない)になっている。かつて若い無業者は「家事手伝い」や「専業主婦」と名づけられていたが現在では「ニート」と名づけられるようになっただけともいえるわけだ。少なくとも女性ばかりが働かないでいたのが女性も社会参加するようになったのは肯定的にとらえられるべきと考える。男性無業者が少ないってのはそれこそ「男性差別」ではなかろうか。

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ブログ名変えた(2011.4.24)。落ち着かないなあ。

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