■2013年10月
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■八木秀次は自民党の会議で非嫡出子相続分区別について当時の女性議員の訴えがあったとか言ってるがそんな発言の形跡が見当たらない

 自民党一部議員が非嫡出子相続分差別規定に関する勉強会を開いて非嫡出子を差別しろと主張していく方針を固めたらしい。んで、その勉強会に参加した赤池誠章議員(参議院比例代表選出)がfacebookで報告している。なんでも八木秀次氏(高崎経済大学教授)を講師として招いて話してもらったらしい。その報告を一部引用。

 そもそも戦後の民法の婚外子相続規定、嫡出子の2分の1というのは、家制度の残滓ではなく、たまたま戦前の規定と戦後の規定が同じになっただけである。戦前の家督制度は①嫡出男子、②庶出(婚外子)男子、③嫡出女子、④庶出女子・・・の順番であり、区別はなかった。戸主以外の家族の例外的な遺産相続の場合だけが、婚外子が嫡出子の2分の1とされていた。
 戦後の民法改正の立法趣旨はまったく違う。家督相続は廃止され、憲法24条の婚姻の尊重規定から、当時の女性議員が旧い家制度で苦しめられた正妻を代表して、妾の子である婚外子の相続規定はゼロにすべきだと訴えた。結局、法律婚=正妻と妾の子=婚外子の利益の妥協として、相続権は認めるが、割合は2分の1とする現在の規定になった。女性議員による女性の地位向上の結果として認められたのである。

 大変驚きの事実である。なんと、非嫡出子相続分差別規定は女性の地位向上の結果だったと言うのだ。うへうへえ。参りました。

 …で終るわけがないのはこのブログを読んでくださってる読者の方ならすぐわかることだろう。さっそく、国会会議録を漁ってみた。戦後の帝国議会会議録と1947年7月28日までの衆参両院の会議録を「庶子」「嫡出」でor検索した。また、日本法令索引で昭和22年法律第222号民法の一部を改正する法律(この改正で親族に関する規定が大幅に改正されほぼ現行民法となった)の審議経過として出てくる会議録を「嫡出」でページ内検索した。その結果、八木氏が主張するような発言はどーこにもなかった。一点だけこの問題に関連しそうな女性議員の発言がヒットしたので念のために掲げておく。

 只今の司法大臣の御答へは非常に柔軟性のある御答へとして私は承りましたのでございますが、それではもう少し突込んで伺はなければならないと存じます、それは現在の日本に於きましては庶子と云ふものが認められて居ります、此の庶子と云ふものは妻でない婦人との間に夫が設けました子供を認知致しましたもので、庶子として從來は妻の同意があつてもなくても是は家に入れることが出來たのであつたと存じます、然るに先程から申上げて居りまする改正民法の方では、それでは餘りにも妻の人格を無視して居るので、もう少し進歩させまして此の改正要綱に依りますと、庶子の入家と云ふ所では、「庶子の父に配偶者ある場合に於ては其の同意あるに非ざれば父の家に入ることを得ざるものとすること」と云ふことが書いてございます、結局要するに庶子と云ふものはまだ認められて居ります、そこで私はそれならばそれと同じことを婦人の場合にも認めて、夫の知らない所の子供があつた場合に、是もやはり庶子として家に入れる方が宜いと云ふやうなことを決して申して居るのではございませぬ、唯私として申したいのは、斯く云ふやうな規定がございます爲に何時も家庭の生活と云ふものは父が中心になつて居り、父と云ふものの下に總てが從はなければならないと云ふ状態につて居ります、さうして只今特に此の問題を取上げなければならないと存じますのは、此の戰爭に依りまして若い寡婦が小さい子供達を抱へて將來の生活と云ふことに付ては非常に不安な境遇に置かれて居ります、さう云ふやうな場合に今までの此の家及び父、夫を中心にした斯う云ふ觀念が何處までも附纏つて居ります爲に、若い未亡人は、子供達を抱へた儘再婚すると云ふやうなことは、今までの觀念では恐らく出來ないことでございます、若し此のやうな觀念がもう少し改められまして、理解ある男性は不幸な未亡人を子供ぐるみ家に入れて、さうしてやはり其の保護者である所の義務をも負擔して呉れると云ふやうに、全體の空氣が改つて參りましたならば、此の家族生活と云ふものは非常に民主化され、又非常に和やかな空氣が出て來るのではないかと云ふ風に考へますので、特に此の庶子と云ふ問題、庶子の入家の問題に付て司法大臣に御伺ひ致します
―第90帝国議会衆議院帝国憲法改正案特別委員会、1946年7月6日、加藤ジヅエ氏の発言

 氏の発言はむしろ庶子という区別をなくして夫に先立たれた女性の子をきちんと家に入れるようにしたら民主的になるとする趣旨の発言である。非嫡出子の相続分をゼロにしろなどとする発言ではない。
 また、民法の一部を改正する法律の審議過程でも非常に興味深い発言が見られる。以下引用。

 四號の担書の嫡出でない直系卑族と嫡出である直系卑族との相續分に差等をつけてあります。これについては、あるいは憲法違反であるという議論も起きたのでありますが、要するにやはり現行法千四條の担書を承繼いたしたのでありますが、やはりこれは嫡出でない子に相續權を與えるべきではないという思想が、相當各國の立法例にあるのでありまして、むしろ正當な婚姻を尊重するという建前からいいまして、正當な婚姻の結果生れてきた子供と、そうでない正當でない子供との間において差等を設けるということは、これはむしろ妥當なんではないか、むしろそういう嫡出でない子供を相續人に入れることが一體よいかどうかということが問題になり、入れないという方が正當があるという議論さえあるくらいでありますから、入れるには入れたが、やはり正當な結婚の子供より一段少い相續分を與えるということを法律に入れるべきでないか、その意味において憲法違反でないという解釋でおります。
―第1回国会衆議院司法委員会、1947年8月22日、奥野健一政府委員発言(このほか同氏による同趣旨の発言がいくつか見られるがここでは割愛した)

 はい、発言してますねえ、政府委員が。政府委員ってのは早い話が官僚だ。官僚が出してきた案が既に非嫡出子相続分を差別するって規定だったわけだ。どこに女性議員の訴えがあったのか。しかもここではっきりと戦前の規定を承継したと発言している。「たまたま戦前の規定と戦後の規定が同じになっただけ」とする八木秀次氏の発言はまったくのデタラメだった。もっとも、私が見落としているだけの可能性もあるからもし該当する発言があるのだったらどうぞご指摘いただきたい。

 はぁ。しかし、この程度の調査、ずぶの素人の私でも大体30分程度で終了した。赤池センセイは嬉々として報告する前に秘書かだれかを国会図書館に走らせて調査及び立法考査局の職員あたりに当該発言があるかないかを調べてもらおうとは思わなかったのだろうか。何のために国会図書館があるのかまったくわからないではないか。「今日の我が國民の悲惨の現状は、従來の政治が眞理に基かないで虚偽に基いていたからであります」(1948年2月4日参議院本会議における羽仁五郎氏の発言)という反省に立って国立国会図書館を設立した先人の意思はまったく忘れ去られたようである。
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